2023 Winter
Tokyo-Paris

DELFONICSにとって特別なロルバーン、Rollbahn Cap-Martin(ロルバーン カップ・マルタン)。季節のコラム3回目となる今回のテーマは、Tokyo-Paris。
先日、ロルバーン カップ・マルタンの監修を務めたデザインディレクターの佐藤達郎が、久しぶりにルーヴル美術館地下にあるデルフォニックス パリルーヴル店を訪れました。佐藤以外にバイヤーの行き来なども再開し、また少しずつ物理的な距離が近しくなってきた日本とパリ。今、過ぎ行く気分をお届けします。

観光客でにぎわうパリの街

観光客を取り戻したパリ

それは突然の出張だったそうですが、季節は2022年冬のはじまり。佐藤が空港からパリ市内に到着したのは夕方で、店に着くころには辺りも暗くなっていたとのこと。オレンジ色の街灯が、ちょっと感傷的な気分を誘ったと、佐藤は言います。

― 振り返ると、パリ店を訪れるのは7~8年ぶりだと思う。2011年に店がオープンしたときには、行き来を挟みつつ一年の半分近く滞在していたパリの街。夜ではあったけれど、コロナ後に戻ってきた観光客で街は賑わっていて。当時よく宿泊していたホテルが無くなっていたり、経営者が変わって高級路線に変更されていたり、いくつかのショップが廃業していたりという多少の変化はあったけれど、歴史が支える街の重厚感は以前と少しも変わらなかった。(佐藤)

リヴォリ通りからパリ市街を眺めたスナップ

2022年11月頃より入国制限を緩和したことで、観光客が増加したパリの街。佐藤によれば、ナポレオンの時代からの時の変遷を想像してしまうくらい、歴史の重みをズシリと感じとってきたそうです。

ブームから日常と本質への転換

そして現代。デジタルなコミュニケーションツールが無かったころのこと。パリは、もっともっと日本から遠い場所にありました。メディアを通じて取り上げられていたパリの印象が強く、例えばDELFONICSではトリコロールのレターセットが人気に。カフェブームの発端ともなったフレンチカフェのイメージが強い人も多いかもしれません。その後の2011年に、DELFONICSが店をオープンしてから10年余り。ローカルスタッフと一緒に仕事を進める中で、メディアを通じてイメージしていたパリとは異なる、生活に密着したパリの魅力と深みを知ることになりました。

2011年、オープン時のパリ店
店舗外観

― 例えば、バカンス。とりわけ夏は、店舗のスタッフも1カ月間ほどしっかりと休暇を取る。日本のお盆や正月ともまた少し違う、わかっていたつもりでいたが、人生の楽しみ方と仕事への向きあい方を改めて教えられた感じだ。バイイングとしては本や紙モノを探し回ることが多かったので、古書店や骨董市で生活に密着したアイテムの面白さを知ることもできた。訪れるたびに、その土地の深みを感じたね。(佐藤)

パリの街には和食店も多く、スタッフともよく訪れる
パリ ルーヴル店では素材や手触りの心地よさで人気を集めている

長いトンネルからの出口

もちろんいいことばかりではなく、パリやニースで起きた痛ましいテロ事件や黄色いベスト運動による交通機関の大規模なストライキ、そしてコロナによる長い混乱も共にしました。長く店を閉めざるをえない時期もありましたが、日本とパリのスタッフが力を合わせて乗り越え現在に至ります。

― 今回、急な旅路ではあったけれど、観光客で活気を取り戻したパリのポジティブな空気に触れられたのは本当に良かった。ここ数年、世の中のみんなが感じていた長いトンネルに、明るく差し込む出口の光が自分にも見えたように思う。東京とパリがまた、新たな形でつながっていくことを期待したい。(佐藤)

ロルバーン カップ・マルタンを、パリの街で暮らす誰かが使ってくれていること。私たちが大切にしている手触りや佇まいを、その誰かが同じように感じてくれること。そんなささやかな喜びが、東京とパリという距離を越え、これからも分かち合えますように。

次回のコラムは、2023年春頃の予定です。
寒い冬も、あたたかな気持ちでお過ごしください。

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